なぜ、「風が吹けば桶屋が儲かる」のか
日本のことわざには、ためになるものが色々ありますが、一方で「どういう意味?」と思わず首をかしげるものもあります。
たとえば、「三人寄れば文殊の知恵」は「凡人でも三人集まって相談すればよい知恵が浮かぶもの」という意味で、すんなりと納得できますが、「風が吹けば桶屋が儲かる」はどうでしょう?
ときどき耳にすることわざですが、その理由を解説できる人は少ないのではないでしょうか。
プラスチック製品が普及する以前は、町に一軒はあったといわれる桶屋ですが、現代ではそういったお店にも馴染みがないこともあってなかなかことわざの意味が理解できません。
一体なぜ、風が吹いたら桶屋が儲かるのか。
その理由について、あらためて考察してみることにしましょう!
「風が吹くこと」と「桶屋が儲かるのこと」の関係は?
その関係性は、江戸時代に人気だったある滑稽本の中で明らかになっています。
かの有名な十返舎一九の「東海道中膝栗毛」です。
主人公の弥次さん・喜多さんと同じ宿に泊まった男が身の上話を語ります。
その内容を簡単に説明すると……
風が吹くと砂埃が舞うので、目を病む人が増えます。
そして、失明してしまうと音曲で生計を立てようとして三味線を習う人が増えます。
すると、三味線の胴に貼る猫の皮の需要が増えます。
そして、猫の数が減ってしまうんですね。
猫が減るということは、鼠が捕まらないので、鼠が増えるということ。
鼠が桶をかじるので、桶を買い直す必要があり、桶屋が儲かるという結論に達するのです。
と、ここでワンポイント。
当時、視覚障がい者の仕事は、あんま師や三味線弾きが多かったそうです。
かの琵琶法師も目が見えず、琵琶を弾きながら平家物語を語り伝えていました。
視覚障がい者は国から手厚い保護を受けており、鍼・あんま(マッサージ)・金貸しなどの仕事が確保されていたのです。
これによって、生活が保障されていたのでしょう。
しかし、それも江戸時代が終わるまでのこと。
江戸時代の終焉とともに、幕府からの手厚い保護はなくなります。
そして、それぞれ身に付けた技術を活かし仕事で自立するようになるのです。
「東海道中膝栗毛」において、このことわざは因果関係が強引で、あまり現実的とはいえない馬鹿馬鹿しい笑い話として紹介されていますが、当時の文化的な背景が垣間見られる言い習わしとして、なかなか興味深いものでもありますね。
ことわざが伝えていること
「風が吹くと桶屋が儲かる」のように、一見無関係に思える些細なことでも、実は後々に大きな影響をもたらすことは、意外と現代にも多いものです。
もちろん、あまりにもあてにならない期待は詮無いものですが、最初からなんでも自分に関係ないと決めつけないで、まずは受け入れてみることで、チャンスが広がったり新しい道が開けることもありそうですね!
実は深い意味が込められていることわざ。
これからの仕事や生活に役に立ててみてはいかがでしょう。
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