江戸っ子にも大人気!初鰹はなぜめでたい?
二回の旬を迎える魚
食欲の秋、なんてことを言いますが、実際には春夏秋冬おいしいものってありますよね。
四季のある日本では、旬のものをいただくことは最高の贅沢です。
なかでも初夏を代表する味覚のひとつ「初鰹」は、「目には青葉 山ほととぎす 初鰹」と江戸時代の俳人によって
俳句に詠まれるほど、古くから日本人に親しまれていました。
さて、それにはどんな理由があったのでしょう?
鰹の旬は年に二度あります。
まず春から初夏にかけて、日本の太平洋側を北上してくる鰹。
これが今回の主役である「初鰹」です。
そして、初秋に南下してくる鰹は「戻り鰹」。
初鰹はさっぱりとしていて、初夏に人気の味覚なのに対して
戻り鰹は夏場にエサをたっぷり食べているため脂が乗って濃厚。
同じ鰹でも、味わい方が違うのですね。
鮮度のいい鰹は、包丁を入れると血が多く出るのが特徴でしたが、当然、流通網は今のように発達していません。
新鮮なまま城下に運ばれること自体が難しく、せっかくの初鰹を長旅の途中でダメにしてしまうことも珍しくありませんでした。
口にするだけでも運がいい
だからこそ貴重な初鰹は、高値で取り引きされるのが常でした。
文化9年(1812)3月に、初鰹が日本橋魚河岸へ17本入荷したときのこと。
そのうちの6本は将軍家が買い上げ、3本は高級料理店が買い、残りの8本はすべて魚屋へと。
魚屋にわたったそのうちの1本を、当時の人気歌舞伎役者が3両で買い、大部屋の役者にふるまったという逸話も残されています。
3両というと、現在のお金に換算するとおよそ15万円。
※現在のお米5kgの値段を1,700円とした場合。
米1石(約150kg)=1両として
1,700円÷5×150kg=51,000円×3両=およそ15万円
それほどの大金をつぎ込んでしまうほどの魅力があったのですね。
当然、庶民にとっても初鰹はあこがれでした。
はしりの時期(その年の出始めの時期のこと)をすぎたら値段も次第に下がっていきますが、そこまで待てないのがせっかちな江戸っ子。
「女房を 質屋に入れても 初鰹」ということわざが残るほど初鰹には食べる値打ちがあり、入手することが粋とされていました。
それには貴重だからという以外に、どうやらもうひとつ別の理由があったようです。
そのワケとは、初物を食べると「75日分長生きできる」と考えられていたこと。
特に初鰹は大人気で、通常の初物が75日長生きできるなら、より有難い初鰹は「750日長生きできる」と言われたほどです。
実際に、現代では鰹には貧血予防、造血作用があるビタミンB12、鉄分などが豊富なことが分かっているので当時のウワサもあながち間違いではなかったというわけですね。
美味いうえに、栄養価も高く健康維持にももってこいな旬の味覚・初鰹。
江戸時代の人たちに大いに人気を博したのもナットクです。
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